ビタミンA

 ビタミンAは脂溶性のビタミンで大きく分けて二つの働きを持っています。ひとつは物を見る視覚作用と、もうひとつは全身に働く機能です。

 物を見る作用には色彩を感じたり、明暗を感じたりする能力があります。みなさんの中にも、経験をされた方がいるとおもいますが、明るいところから急に暗いところに入ると、しばらくの間何も見えなくなります。

 何分か時間が経つにつれて少しずつ回りの物が見えてきます。これは、ロドプシンというビタミンAとタンパク質が一緒になって複合体を作っている成分が目の網膜にあって働いているのです。

 それと、ビタミンAと三種類の色素タンパク質が結合して天然色を見分けるのに働いています。

 ビタミンAは視覚の他に全身に働く機能も持っています。この機能は極めて大切で、私たちの体を作っている組織の上皮細胞といわれる細胞が正常になるのに必要です。

 皮膚もそうですが、口から肛門までとか、口から肺のように外部につながっている組織を作っている細胞が上皮細胞といわれます。この細胞が正常に発育し、正常に機能していくためには、ビタミンAは欠かせないのです。

 もし、ビタミンAが不足すると、免疫機能が低下して、外部の空気と接触しているところは、病原菌に冒され、色々な病気にかかりやすくなります。

 同じような働きに生殖機能の維持があります。いわばビタミンAが不足していると、子供ができにくくなるのです。

 ビタミンAには、レチノールと呼ばれる化合物と、レチノイン酸、ビタミンAが二つくっついた型のβカロチンがあります。視覚作用に働くビタミンAはレチノールだけです。このレチノールは植物にはなく、動物だけに存在しています。

 多分植物は物を見る必要がないので、βカロチンの型になったのでしょう?
ワンポイントアドバイス

 人間はビタミンAを蓄える所が肝臓だけですが、夏の土用の頃に夏バテ防ぎに食べられる鰻は少々変わり者で、肝臓以外にも体中の筋肉にビタミンAを貯めておく事ができます。

 ですから、鰻の蒲焼は百グラムに五千単位もビタミンAが含まれています。この五千単位というビタミンAの量は成人男子二日分以上のビタミンAの所要量に相当します(所要量とは、それだけ取れば欠乏症が起きる可能性が全くないという量のこと)。

 ですから、昔は普段の食事では不足していたビタミンAの補充に、夏バテの回復に、鰻が宣伝されたのでしょう。

 しかし、この鰻はアトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患の人、あるいは炎症性の病気のある人には不向きとされています。鰻には炎症を引き起こすヒスタミンの前駆体ヒスチジンという物質が多く含まれているのです。

 そんな方へのビタミンAの補給には錠剤等で市販されている物が好ましいでしょう。